「KIDS☆KIDS☆KISS」
エピソード3 〜授〜
―――その頃、崑崙山。
太乙は、乾元山の自室で、1人決心をしていた。
「よ・・・よしっ!今日こそは道徳に、告ってやる!」
太乙は、道徳に恋心を抱いている。
と言うより、12仙のほとんどは、道徳のことが、
ハッキリ言って「好き」だった。
道徳は今、弟子をとっていない。
太乙も、霊珠の開発を進めてはいるが、弟子はいない。
「フリー同士でラブラブ〜vって、いいよねーvvv」
などと変なことを言いながら、乾元山から黄巾力士に乗って紫陽洞へ向かう。
今の時間帯、道徳は、紫陽洞の周りで筋トレをしているはずだ。
「後から驚かして、そのまま押し倒しちゃったりしてッ!!キャーvvv」
自分の妄想に顔を赤くしながら、太乙は急ぐ。その時。
前から、自分と同じ黄巾力士が凄まじいスピードでやってきた。
その黄巾力士には、道徳が乗っていた。
「ああっ!?道徳!!」
太乙は、ブレーキをかける。
「おー、太乙!丁度良かった♪」
道徳もブレーキをかけた。
2つの黄巾力士は向き合い、宙に浮かんでいる。
「丁度良かったって・・・?」
太乙は、すこしときめいた。実は、道徳も私に愛の告白をしようと、乾元山まで来ようとしていたのかも!
太乙は、心の中でリンボーダンス一年分を踊った。
顔は、にやけている。
「あのな、太乙、実は・・・」
道徳のクチビルが、おもむろに動く。
太乙は、にやけながら道徳を見つめる。「おまえんちにあったゴマせんべー食ったの俺なんだ!!黙っててごめん!!」
太乙は思いっきりずっこけた。
ゴ・・・ゴマせんべー?
そんなこと、すっかり忘れていた。
「そ・・・そっか。あれ食ったの道徳だったんだ・・・」
やっと言えたのはそんな言葉だった。
「ホントに・・・ごめんなっ 今度、なんかおごるからさっ」
上目遣いに訴える道徳。
その仕草がとても愛らしくて、太乙は、今なら言えると思った。「道徳・・・せんべのことは良いからさ・・・。私!実は道徳のこと、すっ・・・ぐはぁっ」
そこまで言って、太乙は腹を押さえる。
太乙の黄巾力士に、何かがぶつかったからだ。
振動でハンドルが、太乙の腹にテクニカルヒットした。
「太乙!?何がぶつかったんだ!?」
道徳は、黄巾力士の高度を下げて、太乙の黄巾力士の底を見た。
そこには、小さな子供が1人。
黄巾力士に頭をぶつけて、気を失っていた。
「な・・・」
道徳は、目を見開く。
「な・・・何だい、どうしたの?」
太乙が上から道徳に訪ねる。
「なんてかわいい子供なんだ!!!」
「はぁぁ?」
道徳は、その子供を抱きかかえる。
頭がめり込んではいたが、切れたり、こぶが出来ていたりはしなかった。
ただ、鼻に絆創膏が貼ってあった。
道徳は、先ほどまでいた場所に戻り、太乙に子供を見せる。
「見ろよ太乙!めちゃくちゃかわいーだろ!?」
道徳は、子供の頭を撫でた。
「え・・・じゃなくて道徳!私ねっ!」
太乙は、気を取り直して告白をしようと試みたが、道徳は聞いていなかった。
「よっしゃ!俺、この子を弟子にする!!仙骨あるし、迷子みたいだし!」
そう言うと、道徳は黄巾力士のスピードを上げた。
「じゃーなー!!!」
道徳の声がどんどん遠くなっていく。「どっ・・・道徳!?」
後には、1人寂しく太乙が残った。
―――その子供は、黄飛虎の息子、黄天化だった。